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霧島酒造株式会社 醸造研修(2023年)

2023年11月8日~11月9日営業職男性

  • 所属部署は研修時のものです。

人と風土の醸すもの

2023年11月8日・9日の2日間にわたり、霧島酒造様で研修させて頂きました。

まず1日目は、焼酎造りの工程を追いながら工場見学をさせて頂きました。
焼酎造りには米・原料(芋)・水と、大きく分けて3つの原料が必要です。それらを使用して、「製麹」「発酵」「蒸留」の工程を終えることで原酒が出来上がります。出来上がった原酒は、貯蔵された後、酒質を均一化させるためにブレンダーの方がブレンドを行い、商品として市場に出ます。
特に霧島酒造様のお酒は、地元の霧島連山が生み出す地下水「霧島裂罅水(きりしまれっかすい)」で仕込んでいます。このお水には適度なミネラル分が含まれていて、酵母が発酵するのに適した条件が揃っており、実際に飲んでみると口当たりもまろやかで「霧島」の美味しさを支えていることが感じられます。
余談ですが、霧島酒造様ではこの霧島裂罅水の泉を無料開放しており、地元の方々が列を作ってお水を汲みに来ている光景を見ることが出来ました。

2日目は実地研修ということで、原料芋の選別作業や地元の畑へ赴いての芋掘り体験を行いました。芋の選別作業は特に難しく、次々に流れてくる芋の良し悪しを瞬時に見分ける技術は、一朝一夕には身に付かないように感じました。

↑芋の選別作業
↑芋掘り体験の様子

私が今回最も強く実感したことは「お酒は自然の産物である」ということです。

特に霧島酒造様をはじめとする各芋焼酎メーカー様が頭をかかえている問題ですが、原料である芋の病気(以下「基腐病」と表記します)が蔓延しており、慢性的な原料不足に陥っています。今回の研修期間中も、現場の方にお話を伺うと、入荷した芋は普段よりも少ないとのことでしたし、実際、かなり小さい芋も含まれており、原料不足の現状が感じられました。

2018年に発見されたというこの「貴腐病」は未だに沈静化することなく、また、これまでは土中の根への感染が主だったものが、最近は茎への感染も見られ、むしろ感染が拡大しています。有効な手立てがなく、土を媒介して感染するため、感染した場合は畑の土ごと入れ替えなければ次の芋が育てられない、という強烈な病です。そのため、芋の栽培をやめて別の作物をつくる農家様も増えているそうで、これも原料不足に拍車をかけている一因のようです。

このような状況に対抗すべく、霧島酒造様では、総工費約14億円をかけ、さつまいも種苗センター「イモテラス」という施設をつくられ、今年9月に稼働を開始しました。

この施設では主に2つの事業を行っています。
① 健全な苗の育成・供給
② さつまいもの研究開発

この「イモテラス」にも実際に訪問しましたが、育苗ハウス内へ虫が入らぬよう扉が二重になっていたり、土からの侵入を防ぐためにハウス周囲の地面もコンクリートで固めていたりと、その徹底ぶりには驚かされました。様々な病原菌は虫を媒介にすることが多いので、このような対応を採っているとのことでした。
まだ稼働したばかりであり、培養した健全な苗にも数に限りがありますが、今後、数が揃ってくれば、JA等を通して芋農家様へ販売していく予定とのことです。
また、現在育成している品種は焼酎造りの主軸を担っている「黄金千貫」がほとんどですが、「基腐病」に抵抗性が高いといわれる新品種「みちしずく」の育成も行われており、黄金千貫の代替品として期待されている様子でした。

この苦境の中で、いかに霧島酒造の皆様が知恵を絞り、現地の芋農家様と共に「基腐病」に対抗しているのか、最前線の現場を訪問し、肌で感じることが出来ました。

↑「イモテラス」外観
↑育苗ハウス

2日間の研修でしたが、酒造りの大変さと尊さを改めて体感することができました。
どの居酒屋に入っても、どのスーパーマーケットへ行っても、当たり前に置いてある「黒霧島」をはじめとした霧島ブランドですが、その一つ一つは農家の方々が育てられた芋や米が原料であり、麹菌や酵母等の、いわば自然の力を借りて醸されているもので、決して簡単に出来上がるものではないという事実を、今回の研修を通じて実感しました。
特約店として、このような尊いお酒を販売できることに感謝を忘れず、今後も拡売して参ります。